■第2回では、アクションラーニング(以下AL)における「ふり返り(リフレクション)」とALの効能(効果・メリット)について述べました。
第3回(本テーマ終了回)は、ALとコーチングの関係について述べます。
■本連載のテーマが『コーチングの次なるステップ、研修と実践を結ぶ「アクションラーニング」とは』ですから、タイトルからして「コーチング」より「アクションラーニング」が進化しているとか、よりお勧めしているような印象をお持ちかもしれません。
しかし、私自身確かにコーチングを学んでから次にALを学んだので、次なるステップとはその意味が含まれていても、決してどっちが良いと言う話をしたいわけではありません。
同様のことは、ティーチングとコーチングについても、これからは「コーチング」が大切だというような主張もありました。しかし、どのような手法(アプローチ)も相手と目的その他の状況によるのであって絶対的にいつでも必ず効果がある手法などはないと思います。
■最近AL手法による問題解決研修やマネジメント研修を実施して(この7月〜9月初めの約2ヶ月間で、AL基礎講座も入れると7本がAL中心の研修)発見したことが3つあります。
●一つ目は「AL研修の方がコーチング研修以上に、受講者が質問の大事さを実感できている」と感じました。
ALではコーチング研修と比べると、傾聴のスキルや質問のスキルについてのトレーニングはほとんどしていません。しかし、研修終了後の感想で多くの人が「質問」して相手や部下の考えを引き出すことは重要だ、と非常に実感を持った言葉で語ります。そして研修の終わり頃に、研修のふり返りのための対話場面をつくると非常によく相手の話を傾聴し、質問してコーチング的な関係をつくることができていました。
●二つ目は「トレーナー(ALコーチ)が質問してふり返りをすることが多くて、教えることが少ないほど、受講者の気づき・学びが多い」ことに気づきました。
一つ目に感じたことにも近いのですが、職場の問題解決を考えながら7人のグループでALセッション(つまり7回)を2日間の研修でやった時に、あまり全体で教える(レクチャーする)時間などとれませんでした。勢い各セッション終了時のふり返りタイムが中心となります。
結果として、それが良かったということに気づきました。時間がないので余計な(トレーナー視点での思い込みの)ティーチングがなく、メンバー自身のふり返りとALコーチの質問でメンバーの中で気づきや学びが深められていることが効果的だということです。
●三つ目は、コーチングとALとの関係には、直接関連がないようなことですが「私自身が以前より、常に今の研修の受講者が優れている又は良い点が多いというようにメンバーを肯定的にみることができている」ことです。
受講メンバーが前向きで出来る人たちだと研修講師(トレーナー)が感じるとどのような良いことがあるかというと、そう思っていない場合比べると、これはかなりなものです。このメンバーは仕様もない人たちばかりだ、と心の内で思っている講師は言葉には出さなくても、表情や口調などの態度でその気持ちは伝わります。その逆に、何を言っても、それは良いですねと肯定的に認められる講師の言動により、メンバーが尊重されている研修という雰囲気ができます。
コーチングではクライアントの中に答がある、クライアントは常に最善である…など、クライアントを承認し、尊重することはコーチングの基本的な姿勢・あり方です。
ALでもALコーチはメンバーの学習の最大の支援者であり、規範においてはお互いの尊重、サポートをうたっています。
結論的に言うと、トレーナーであるALコーチ自身、つまり私がALセッションをその目的のために最大限に役割を務めることで、自分自身の変化(成長)があったということです。
■本稿でお伝えたしたい見解をいくつか述べます。
@ALはその参加したメンバーがお互いをコーチングしあえる信頼関係や協働関係をつくることに役立ちます。なぜなら「質問」の有用性を実感できるからです。
Aグループメンバーが提起した現実のある問題について、問題解決を意図して質問と答えと対話のコミュニケーションを繰り返す中で、「質問力」が磨かれていきます。
B1対1のコーチングでの気づきや学び以上に、複数人数のしかも相互に誰が誰に質問してもよい対話のセッションであるALを通しての気づき・学びがより豊なものになる可能性が大といえる。
Cコーチングでのコーチ役は先生ではないとは言え、何かあるレベル以上のものを持っている、尊敬とまでいかなくても模範やモデルになるような信頼感が暗黙に求められます(業績の悪い営業マンが良い営業マンをコーチングすることは実質不可能)。しかし、ALではお互い普通のメンバー同士が相互コーチングの機能を果たすことができます。
DALコーチは、メンバー同士がコーチングのコーチをできるような関係性のチームを作ることがその役割であること。つまり、お互いが質問と答えと言う対話セッションの中から学習することができる関係性の構築がALコーチの目指すことである。
現段階での私の結論は
(1)コーチングを職場で活用している会社で、ALを導入するとコーチングが加速的に活用され機能するようになる(かなりの確信度合いで)。
(2)ALを導入・活用した組織で、さらにリーダー、マネージャー役の人がコーチングスキルを学ぶと現実に役立つコーチングが行われる(可能性が非常に大きい)。
この2つの結論は、この4月から約半年の私の研修実践を通しての学びです。当初この原稿を書き始めたときには、明確ではなかったのですが、ここに来てかなり断言できる確信とまでなっています。
この9月後半以降、来年の3月までの6ヶ月と少しで、その実践例を作って、機会があればご報告していきたいと思っています。
3回にわたった「コーチングの次なるステップ、研修と実践を結ぶ「アクションラーニング」とは」をここまでお読みいただき、ありがとうございました。
よろしければ、ご感想・ご質問をお寄せ下さい。
2007年09月08日
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